狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅣ―ⅸ 苛立ち
先程報告へとやってきた数人の家臣は主の命令を待ち、戻された書類を手に後方へ待機していた。
「いや、もう十分だ。…この調査は今後不要とする」
「はっ!」
丁寧に一礼し、その場をあとにする家臣たち。その後ろ姿を不安げに見守るのは少し離れた場所にいる女官や侍女らだった。
「…やはりあの子の両親が見つからないんだわ」
「お可哀想に…」
彼女らの心をとらえて離さない幼いアオイの存在は、誰もが愛おしく守りたいと思うほどまで大きくなっていた。
そして何かを考える様子を見せたキュリオは思いついたように顔を上げ、城の上層階を見回している。
(やつは一体どこから飛び立った…?)
(日の光が苦手なヴァンパイアがわざわざ日中に出向いてまでこの国に来た理由は…)
「すでに書簡がやつの手に渡ったとしたら…」
彼の姿が見えた上空から視線を落としていくと、ただ一ヶ所だけ不自然に内側からカーテンが零れ、その身を揺らしている窓がある。
「…執務室か」