狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅣ―ⅴ 使者の帰還まで残りわずかⅠ
その時、茶の入替えにきた侍女へ眠るアオイを見守るよう指示を出したキュリオは大魔導師を引き連れ広間へと急ぐ。そして二人を受け入れるように扉が開かれるとあらかじめガーラントから命を受けていた他の家臣や侍女たちは、使者の帰還に備え出迎えの準備をはじめていた。
「キュリオ様、どうぞ奥へ」
女官の一人が近づき、彼らを座り慣れたソファへと案内していく。ガーラントは深く一礼するとキュリオの向かい側のソファへと腰を落ち着けさせ、口を開いた。
「ブラストからは怪我人が出たという報告は入っておりませぬ。少々時間がオーバーしている気がいたしますが問題ないとみてよろしいかと」
「……」
無言のままソファへと背を預けたキュリオは長い足を組み、その上に片手をおいて窓の外に目を向けた。すると自室からみた黄昏の空は、より一層橙の色を濃くし眩しい程に西の空を輝かせていた。