狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅤ 各国からの返事Ⅲ
キュリオに問われたブラストがそのまま報告に入り、出発から各国を渡るまでの話を順を追って話始める。その間、頷き彼の報告を聞いていたキュリオは…おもむろに手のひらを広げると何もない空間から漆黒の羽を呼び寄せた。
(あれは…鳥の羽?)
キュリオはブラストの声に耳を傾けながらも、その羽をうっとおしそうに見つめ…灯へと近づける。すると…
―――ゴォォォオ
と、激しい音を立てて漆黒の翼は銀の炎に焼かれ跡形もなくなってしまった。キュリオの背後にいるガーラントに目を向けると、彼は眉間に皺をよせ深刻な表情を浮かべていた。
(先生のあの表情、ただの羽じゃない…?)
そんな事を考えていると、ブラストの報告は問題のあった[吸血鬼の国]と[死の国]の話に移り始めた。
「その時アレスの腕を掴んで引きずり込もうとした女のヴァンパイアが、キュリオ様の加護の灯の制裁を受けまして…」
ブラストの言葉を最後まで聞かず、キュリオは不機嫌そうに声を重ねた。
「あの国は王が未熟だからな。下の者が痛い目に合えば、奴も少しは学習するだろう」
彼の鋭い口調からも、キュリオがヴァンパイアの王のことをよく思っていないことは一目瞭然だった。すると怯えたように肩をひそめたのは見習い剣士のカイだった。
『な、なぁアレス…悠久とあの国って何か因縁でもあんのかな…』