狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅥ キュリオとアオイ…親子として
「なんて良い夜なんだろう…」
ガーラントと侍女の出て行ったキュリオの寝室では、幼いアオイと見つめ合っている銀髪の美しい王の姿がある。
家族として誰かを受け入れることがこんなに素晴らしいものだとは彼自身思ってもみなかった。彼の家族と呼べる肉親は人の一生分の生涯を終え、すでにこの世に存在していない。実に五百年ぶりとなるにも関わらず、キュリオにはなんの躊躇(ためら)いもなかったのだ。
「愛せると思ったから君を娘として受け入れたわけじゃない…私はもう君を愛しているから傍に居て欲しいんだよ」
「こんな勝手な私を君は責めるだろうか」
決定権のない赤子のアオイは、国随一の権力を持つキュリオの前では成す術など持ち合わせているはずがない。いまはただ彼に従い、数年後物心がついた頃…この状況を彼女が知ってどう判断するかだろう。
(もし将来君に拒絶されてしまったら…)
そう思うと少し怖くもあった。アオイがこの城での生活が嫌だと言い出したら彼女の好む環境へと生活の拠点をうつしてもいい。