狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅥ―ⅳ アレスとカイ
早めの夕食を済ませた使者たち五人のうち、ブラストとアレスの先輩にあたる二人は、使者としての活動報告書を作成する為それぞれの部屋へと引き上げて行った。残されたアレスとカイは、食べきれない程の御馳走を前に十分に満たされた腹部を押えながら言葉を発した。
「なぁアレス、結局書簡の内容ってなんだったんだろうな…冥王の時に"該当者なし"って言ってただろ?」
「うん…私は最初にキュリオ様とお会いした時に何となく先生たちが話している内容を聞いていたから予想はつくけどね…」
するとアレスの言葉を聞いたカイは身を乗り出して話に食いついてきた。
「お前知ってたのかっ!って直接聞いてない俺はそれを聞いてもいいのか…?」
カイは胸に手を当て、己と葛藤している様子だった。見習いの自分が他国とのやりとりを、しかも王が関わる話に首を突っ込んでよいのかなど、身分をわきまえているつもりなのだ。
アレスも同じ考えで、ただ自分は居合わせただけで実際に会話していたのはキュリオとガーラントだ。なので尚更、簡単に話してはいけない気がした。
しばらく二人が唸(うな)っていると、静かな客室に扉を叩く音が響く。
―――トントン…
ぱっと顔をあげ、アレスが扉に近づき声をあげる。
「はい、どうぞ」
…ガチャ―――
ゆっくり扉が開くと…
「儂じゃ。ガーラントじゃよ」
と、待ちに待ったアレスの師・ガーラントがにこやかな笑みを浮かべ、顔を覗かせたのだった。