狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅥ―ⅹ 小さな小さなプリンセス
気を利かせた侍女が置いていった新しい寝間着用のベビー服に目を向け、キュリオは手際よく彼女の体に着せていく。今回は眠る事を優先させた服だけに、フードはついておらず作りもゆったりしている。
「よし、これでいい」
「何を着ても本当にお前は可愛いね」
うっとりと思わず目元をほころばせてしまうキュリオは早くも親馬鹿ぶりを発揮していた。彼はこの日から何をするにも彼女を優先させてしまう事になるが、本人には全く自覚のない自然な行動だった。
「夕食はここでとろう。明日からは広間にアオイの椅子も用意させよう」
部屋の外で待機していた侍女に声をかけ、自室へと夕食を運ばせる。そしてトレイを運んできた女官のひとりへ明日(あす)からの食事の模様を話すと…
「すでに用意は整っておりますよ、キュリオ様」
と満面の笑みを浮かべた彼女。キュリオが不思議そうに目を丸くしていると、
「キュリオ様を見ていればわかります。あの子が来てからずっと…」
そこまで言うと、女官はさらに笑みを深め上品に微笑んだ。
(…そんなに私は不思議な行動をとっていたのだろうか…?)
急に考え込んでしまった銀髪の王に、居合わせたほかの侍女たちも優しい眼差しを向けてくる。
「どう申し上げたらよいかわかりませんが…皆、これがお二人様の一番幸せな選択だと思っていますわ。私たちも全力でお手伝いさせていただきます」
その言葉を切り口に、彼女と背後にいる数名の侍女たちが一斉に恭(うやうや)しく頭を下げた。