狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅦ―ⅱ 精霊王の謎Ⅱ
「はい、門の番をしていたのは風の精霊で…それから光の精霊が出て参りました。精霊王の御姿は残念ながら…」
「精霊はたまに悠久の森や川の傍でも見かけるでな、まぁ珍しいといえばそうなるやもしれんが…精霊王は別格じゃよ。一度キュリオ様と城の中庭で会話している姿を遠目で見たのが儂は最初で最後じゃな…」
それを聞いたカイは身を乗り出すと興奮気味にガーラントに顔を近づけた。
「か、風の精霊なんか小さい旋風(つむじかぜ)みたいなやつでさっ!光の精霊なんてただの光の塊に見えたぜ!?精霊王はどう見えるんだっ!?」
滅多に見ることが出来ないという精霊王の姿。もしかしたらカイもアレスも一生見ることが叶わないかもしれない。そう思うと、実際目にした者の話が聞けるというのは彼らにとってとても貴重な事なのだ。
「ほぉっほぉっ!カイ、お前さんなかなか賢いな!何も知らぬ者は大抵、精霊王と精霊は同じような姿をしていると思い込むものなんじゃよ!」
嬉しそうに笑うガーラントは、目の前の小さな剣士と魔導師にゆっくり語りかける。
「自然体の精霊王は人のかたちをしておる。遠目でわかるくらい麗(うるわ)しいお方じゃよ。しかし…」
そこまでいうとガーラントはわずかに表情を曇らせた。