狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅦ―ⅷ 紅蓮の王・ティーダⅡ
「この世界が創られた頃の話じゃがな…千年王に匹敵する程に強いヴァンパイアの王がいたそうじゃ」
「その王が戦いの際に見せたオーラが紅蓮の炎だったという。そして戦った相手というのが初代の悠久の王じゃ。因縁というものはなかなか断ち切れんものよのぉ…。紅の瞳に漆黒の翼はいつの代の王も変わらぬようじゃが、紅蓮の炎を見せた王がその後出たという話は残っとらんようじゃな」
数刻前、キュリオが自らの手で"加護の灯"に焼かせた漆黒の翼を思い出し…大魔導師は眉間に皺を寄せた。同じくカイもキュリオが発した言葉と表情を思い出し呟いた。
「漆黒の翼か…そういや、ヴァンパイアの王はどうたらって嫌そうな顔してたもんな…」
「そうだよカイ、キュリオ様がヴァンパイアを嫌うのは自然な事なんだ。彼らはただ血を吸うだけじゃない、時には人を殺してしまうこともあるんだよ」
「えっ!あ…そういや"喰う"ってそういう意味か…俺、てっきり噛みつかれるって事かと思って、ブラストのおっさんの話聞いてたや…ん?じゃあ悠久の門を常に閉じるっていうのはだめなのか?」
思いがけないカイの言葉にアレスは目を見開いている。しかし、ガーラントの表情は堅く…それが不可能であることは容易にわかったのだった――――