狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ キュリオの能力
一方的にキュリオが話掛けるだけで、彼女からはにこやかな微笑みが返ってくるばかりの夕食だったが…そんな事にも幸せを感じずにはいられない。
「今はまだミルクしか口に出来きぬが、そのうち好みが出てくるだろうね」
優しくアオイの口元をぬぐいながら勝手に想像してしまう。
「庭の花からいくつかの茶葉が採れるんだ。是非アオイにも紅茶の素晴らしさを知ってもらいたい」
キュリオは目の前のカップを持ち上げ、アオイの目の前に持って行き…花びらの浮かぶ香り豊かな淹れたての紅茶の香りをかがせてみる。
「……?」
彼のその行動が何を意味するのか幼い彼女はまだ理解していない様子で、ただ揺れる色のついた水面を覗き込みながらぱちくりと瞳を瞬かせていた。
「どうだい?よい香りがするだろう?」
アオイの顔を覗きこむキュリオだが、次の瞬間彼の穏やかな表情が驚きに変わる。
彼女の小さな手がカップの中の揺れる花びらを掴もうと、その指先を投げ込んでしまったからだった。
「…っ!」