狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ―ⅰ 初めての痛みⅠ
驚いたキュリオの反応のほうが一瞬遅く、ピチャ…と音を立てた紅茶にダイブしたアオイの指先。慌てたキュリオは勢いよく椅子から立ち上がり、ガシャンと勢いよくソーサーにカップを押し込む。そして口をぬぐうために置いてあったナプキンに水の入ったグラスを傾け濡らすと…わずかに赤くなったアオイの指先を優しく包んでいく。
「……」
その様子をじっと見つめているアオイ。
いくら熱湯ではないといえ、生まれて間もない赤子の柔らかい皮膚には大変なダメージのはずだ。
「…すまない、アオイ…私の責任だ…」
自責の念に押しつぶされてしまいそうなほど悲痛な面持ちを浮かべるキュリオ。彼女の指先を押える右手はわずかに震えており、彼の優しさが痛いほど伝わってきた。
そして痛みを感じないはずがないアオイだが、彼女はまったく声もあげず…キュリオの顔を見上げて穏やかな笑みを浮かべている。
「痛くないのかい…?」
まさかと思いながら、指先を包んでいたナプキンを持ち上げ…中の様子を伺う。
(やはり赤くなっている…痛くないわけがない)