狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ―ⅲ エデン・永遠の恋人Ⅰ
白銀の鎧に身を包んだ<雷帝>エデンは大きな翼を広げ閃光さながらの速さで移動している。彼はこうして永遠の恋人へ会うため…時折とある場所へ足を運んでいるのだ。
どれほど飛び続けていただろう。エデンは迷うことなくただ一点を目指し速度をあげていく。彼の背に光輝く美しい翼は重量感のある<雷帝>の体をもろともせず…そして彼にも負けぬ強い光を放っていた。
やがて見えてきたのはひっそりと佇む廃墟のような建物。もはや住人などいないのではないかと思えるほどに寂(さび)れており、中庭とおぼしき場所には瓦礫(がれき)が散乱している。
「……」
翼を消したエデンは無言のままそこに降り立つと、わずかに香る清らかな水の流れる場所へと足を向けた。枯れた草木を足の裏に感じながら歩くと辺りには乾いた音が響く。
「…前よりもひどくなっているな」
見つけたのは、噴水だったと思われるオブジェの姿。いまでは見るも無残に崩れており、その隙間から水があふれ出しているようにしか見えない。