狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ―ⅴ キュリオ・大地を駆ける癒しの力Ⅰ
アオイを右腕に抱いたままキュリオは自室のテラスに姿を現した。彼が流れるように視線を移動していくと、飛び込んできたのは…民たちの生活の光と淡い輝きを見せる聖獣の森だった。
「今夜も変わりはないな」
空いた左手を胸の高さまで持ってくると、目を閉じたキュリオの手元には無数の光が一瞬にして集まる。そして…それがひとつの塊となると、勢いよく上空へと舞い上がっていった。
それを目の前で見ていたアオイは興奮したような声をあげ、光の行方を見守っている。そして空へと吸い込まれるように消えてしまった光の塊。
「…?」
見えなくなってしまったその塊にアオイの声は止み、愛くるしい彼女の瞳はキュリオへと戻ってきて…まるで"どこに行ってしまったの?"と言わんばかりの表情を向けている。
「まだだよ。見ててごらん」
ふふっと笑ったキュリオの美しい顔がどんどん光に包まれていく。驚いたようにアオイが顔を近づけるが、それは自分も同じだということに気が付いた。彼のバスローブを掴む己の手も輝いており、それがどこからもたらせられたのかと辺りを見渡す。
気がつけば、光の粒子は至る所に降り注ぎ…人の集まる場所にはひときわ光が密集しているようにみえる。見ているだけで心が癒されていくような優しい光に、アオイは眩しそうに目を細めた。