狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ―ⅷ 忘れられぬ愛Ⅱ
???(も、う…何もみえない、きこえない…)
徐々に冷たくなっていく体に重たくなっていく思考…。
暗闇に意識が飲みこまれていく瞬間、別の声に目を見開いた。
「アオイ?…アオイッ!」
はっと息を吸い込むと、それまでの息苦しさもなく…鉛のように重かった体の感覚も消え去っている。
「…?」
夢と現実の区別がつかないのか焦点の合わない彼女の視線はあたりを見回し、しきりに何かを探しているように見えた。
「こんなに汗をかいて…怖い夢を見たんだね…」
キュリオのひんやりとした指先がアオイの額からこめかみへと優しく流れ、不安げに揺れる小さな彼女の目元を優しくなでる。
「…ぅっ…」
今にも泣いてしまいそうな声をあげ、瞳を潤ませるアオイ。
「大丈夫、私がついているよ」
彼女を落ち着かせようと、汗ばむ彼女の体を抱き寄せ背中をさする。
すると…アオイの手がキュリオの襟元を懸命に握りしめ…声を押し殺すように泣いた。
「…夢の中でもこうしてお前を守る事が出来たらいいのに…」
切なく揺れるキュリオの心はたった一人、アオイという愛しい存在だけを想い震えるのだった―――