狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅧ―ⅹ エデン・永遠の恋人の面影Ⅱ
「…大丈夫ですか?エデン殿」
「あぁ…昔を思い出していた。そういえば…誰か座っているのか?あの椅子だけ綺麗だな」
「…はい」
それ以上彼は語らなかったが、エデンには大いに心当たりがあった。
「そうか…あいつか…」
「で、…あいつは今どこにいる?」
「ここ数日戻っておりません。呼び戻しますか?」
「いや、いい。…俺の名前を出したところで奴は戻ってこないだろうからな」
第四位の王・エデンの呼び出しにも応じない人物とは一体何者だろう、と誰もが思うはずだ。しかし、その不在の彼は一向に態度を改めるつもりはないのだという。それをエデンは咎めたりはしないが、時折見せる鋭い敵意がふたりの間に大きな溝をつくっている。
…そんな彼らの関係に誰よりも心を痛めていたのは…彼女だった。
"お願い、二人とも喧嘩しないで"
優しい彼女はいつも眉間に皺をよせ、ふたりの間に割って入っていた。そして彼女は気づかない。自分が何人の男たちに愛されているかということを―――――