狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅨ―ⅱ マダラの大鎌
「ああ、先代…聞くのを忘れていました。他国の王の神具にも同じことが言えるのですか…?」
マダラの呟きに返事があるわけもなく、ただその"何か"がいつなのか彼はずっと待っていた。彼が王となってからすでに四百年。これまで何かが起きたとはいえない小さな話ばかりだった。そんな事のためにこの死の鎌がこのような形を成したとは到底思えない。
その時、扉をノックする音が聞こえ…
「開いている」
『はっ、失礼いたしますマダラ様』
彼の了承を得た家臣のひとりが茶を淹れなおそうとトレイを片手に入ってくる。軽食も用意されており、彼がまだ眠りにつかないであろうことは家臣たちも心得ている様子だった。
手際よく食事を並べていく家臣を眺めながらマダラが口を開いた。
「…悠久に出生不明の赤ん坊がいるらしいけど…どうなったと思う?」
「悠久の使者が持ってきた話でございますか?いくらなんでも出生不明のまま終わることはないかと思いますが…」
「そうだよね…」
(これも違うか…)
小さくため息をついたマダラはまた月のない空を見上げた。
「つまらなさそうですね、マダラ様」
「まぁ、何かあれば向こうからやってくるだろうからね…」
そう笑う彼の瞳は危険な光が見え隠れしている。
彼もまた変わり映えのないこの長い時間に楽しみを見出せないでいるのだった――――