狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅨ―ⅲ 悠久の魔導師・剣士として
「そろそろ儂も部屋に戻るとするか。二人とも今日はゆっくり休むんじゃぞ」
「はいっ!先生ありがとうございました!!」
「じぃさんありがとなっ!すげぇ勉強になったぜ!!」
「うむ。それじゃあのぉ」
にこやかに退室したガーラント。
それを見送るアレスは丁寧に頭を下げているが、カイはというと両手を頭の後ろで組んで相変わらず目の上の者に対する礼儀など皆無かのような態度をとっている。
「カイ、君は本当に怖い者なしだね」
「ん?何がだ?」
カイはまさに自由奔放。この言葉が良く似合う人物だとアレスは心から思った。
「雷の国の使者たちを見ただろう?礼儀正しくて…王に忠実な理想の戦士たちだった」
「それは俺も思った!いつかああなりてぇなって…エデン王みたいな剣士になりたいってのが本音だけどな!」
「まぁ…言うだけタダだけど…使者はその国の王とイコールで見られるんだよ。エデン王の使者を見たとき、その礼儀や統率力に感心しただろう?そしてそれがエデン王の凄さに繋がっている。従者が立派なのはその上の王が素晴らしい人間だからなんだ」
「げっ!!じゃ…じゃあ…俺をみたら…」
「そう。キュリオ様がそう見られるってこと!」
アレスは少々大げさにカイを脅す。このくらいでキュリオ様の偉大さが損なわれるわけはないが、実際カイはエデン王に注意を受けブラスト教官が謝罪する場面があった。
(私もカイの事ばかり責めてはいられないな…)
「俺頑張るぜ…アレス!!王様に恥じない剣士になるためにもなっ!!」
「うん。私も頑張ろう!キュリオ様の手助けとなる魔導師・剣士を目指そう、カイ!」
「おうっ!!!」
単純なカイは明確に指摘してやるのが一番いいとアレスは確信した。回りくどい言い方では彼は首を傾げるだけだからである。
立ち去らず扉の外にいたガーラントは二人の言葉を楽しそうに聞いている。
(アレス、カイ。ふたりとも大きく育つのじゃよ)
「…孫が育つような気分じゃなっ!」
愉快気な声を響かせ、ガーラントはそっと扉の前から立ち去ったのだった―――