狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅨ―ⅳ アオイの異変と真夜中の叫びⅠ
―――キュリオの襟元にしがみ付いたままアオイは小さく震えている。今までにない怯え方にキュリオの胸には不安が広がっていく。
「どうしたんだい?アオイ…」
「…っふ…ぅっ…」
わずかに顔を持ち上げたアオイは何か言いたげな表情を向け…それはまるでキュリオに懇願するような…そんな眼差しだ。
すると…アオイの中でまた夢の声が響いた。
???"(…たす、け…て…)"
「……っ!」
小さなアオイは目を見開くように硬直した。
そして先程の体の痛み、息苦しさが徐々に蘇ってくる…。
これが生にしがみ付く者の叫びなのか、
死を目前にした者の恐怖なのか…
考えずともアオイにはわかっていた。
(これは誰かを想う心の痛み…)
???"(あの人を…)"
???"(…彼を…たす…け、て…)"
???"(…おね、が…い……)"
「……」
「アオイ…?」
頭の中の声が止むと同時に、アオイの意識はそこで途絶えてしまった。ダラリと下がる小さな手に激しく動揺したキュリオはアオイの小さな体を抱きしめ、両手に光を集め始めた。
普段冷静なキュリオだが、アオイの様子があまりにもおかしい。体は冷たくなり硬直し始めているからだ。それはまるで…
―――死を連想させる人体の反応―――
光に包まれたアオイの体はキュリオに抱かれたまま城内を移動している。
「ガーラント!ガーラントはどこにいるっ!!」
聞いたこともないキュリオの悲痛な叫びに燭台をかざした大臣や家臣たちがバタバタと集まってきた。
「キュリオ様っ!いかがなされましたっっ!?」
息を切らせたキュリオの様子からただ事ではないことが伺える。後方では叫びの中からガーラントの名を聞きとった家臣の一人が彼を呼びに魔術師の塔へと急いだ。
「アオイの様子がおかしい!!至急ガーラントを呼ぶのだっ!!」
「はっ!!すでに家臣が呼びに走っておりますっ!!今しばらくお待ちを!!」