狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅨ―ⅴ アオイの異変と真夜中の叫びⅡ
寝静まり始めていた城内は慌ただしく動き始めた。至る所に火が灯され、広間へと集まった女官や侍女たちは何も出来ず涙を浮かべるばかりだ。
「…こんな事って…」
「しっ…縁起でもないことを言うんじゃありません。キュリオ様がおられるのだから万が一にも命を落としてしまわれるなんて事ありえないわ!!」
動揺する侍女を叱咤した女官だが、手が震えている。小さなアオイはキュリオの光に包まれているにも関わらず、蒼白のまま一向に目を覚まさないのだ。
―――自室の火を灯し…書物に目を通そうとしていたガーラントだが、激しく扉を叩かれ名を呼ばれる。
「ガーラント様!大至急広間にお越しくださいっ!!キュリオ様がお呼びになっておられます!!」
「…なんじゃと?」
家臣の悲痛な叫びからただ事ではないことを理解した大魔導師。
「わかった。すぐ向かおう」
「お願いします!」
老人にしては足腰がしっかりしているガーラントは足早に広間に向かった。嫌な予感がする。夜中にキュリオが彼を呼ぶなど今までほとんどなかったからだ。