狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩ―ⅱ 夢に殺される少女と夢を支配する王Ⅱ
「…精霊王の元へ行く…」
はっきり言って彼に会える確率は五分五分だった。
キュリオとて、今まで精霊の国へ足を踏み入れたことはなく…彼の居場所もつかめていないのだ。
「…キュリオ様の…お心のままに…」
彼の決断に深く一礼するガーラント。
「…ガーラント、そなたは精霊の国の門の前で待て」
はっと顔を上げた大魔導師。
「キュリオ様…まさかおひとりで…」
いくら王たちが仲の良い間柄だとしても、精霊の中には気性の荒い者がいるという話だ。
領域(テリトリー)を犯したと見なされ攻撃されないとも限らないのだ。
「私の心配などいらぬ…」
キュリオは悲しそうに腕の中の幼い少女を見つめると、彼の背に純白の翼が光を放ってあらわれる。
そして勢いよく夜空へと舞い上がったキュリオの姿はあっという間に見えなくなり、彼の光だけが残像のように広がっていた―――