狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩ―ⅳ 夢に殺される少女と夢を支配する王Ⅳ
変わらずぐったりしたアオイの体を抱き、すでに開いている悠久の門をくぐり抜ける。
そしてキュリオはそのまま精霊の国の門を目指した。使者たちの報告通り、遠くに見えていたその門は一瞬の間に目の前まで移動していた。
バスローブも肌蹴たまま、扉の前に立つと…
『…この気配は…悠久の王?』
キュリオの気配に気が付いた一人の精霊が巨大な門を開いてくれた。
「…すまない、急いでいるっ!精霊王の元へ案内願いたい!!!」
運良く門の内側にいたのは先日、書簡を届けにきた光の精霊だった。
開口一番、精霊王への謁見を願いでたのは悠久の王・キュリオ。
その姿から見ても穏やかな彼からは想像もつかぬ焦りを抱いているのは一目瞭然だ。
『…御意…』
彼に抱かれている小さな赤子を見て、光の精霊はなんとなく予想がついた。
まるで彼女からは生気が感じられず…死人(しびと)のようだったからだ。
光の精霊は人型になるのをやめ、心当たりのある場所へと向かう。
その後ろを羽ばたいたキュリオが追いかける。
途中、風の精霊たちが好奇の眼差しでキュリオの後をついてきた。
『その翼…もしかして貴方が悠久の王?』
『ねぇねぇっ!そんなに急がなくても時間はいっぱいあるのでしょう!?』
「……」
まるで彼女らの声が聞こえていないキュリオと光の精霊は速度をあげ彼女らを振り切った。
『…まずは神殿へ…』
「…すまない」
(…頼むエクシス…君しかいないんだ…!!)
冷たくなったアオイの体をしっかり抱きしめ、わずかな望みにかけるキュリオだった―――