狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩ―ⅴ 夢に殺される少女と夢を支配する王Ⅴ
"…きっと…"
"…あの人が…悲しんでいる…"
(「どこから来たかなんて関係ないさ…」
「…私たちはずっと一緒だよ」
「"愛しい"という言葉は…お前のためにあるような言葉だね」)
彼女の幼い記憶には…いつも笑いかけ、優しい口づけを落としてくれた銀髪の彼の姿が鮮明に焼き付いていた。
"…彼を…悲しませたくない…"
そして幼い少女の想いが…目の前の少女の涙となって流れ落ちる。
『…なぜ同化した…』
"……"
返答に困っているのか悩んでいるのか、幼い少女からの返事はない。
『…まぁ良い…我の夢に入り込んだこの闇を消し去る権利は我にある…』
スッと細められた青年の切れ長の瞳。
抱き起こした少女の体を一度横たえると…静かに立ちあがる。
―――目を閉じた彼の前で…音を立てて空間が捻じれ曲がり―――
やがて巨大な光の柱が立ち、実体化したのは金色に輝く弓と矢だった…