狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅠ―ⅶ 幸福と悲しき日々の始まりⅠ
腕に抱いた赤子に微笑みながら精霊の国の門をくぐるキュリオ。彼のために開かれた門の向こう側には悠久の家臣と思わしき人物が数十人待機していた。
『…悠久の王があのように慌てられる姿を初めてみた…』
光の精霊がぼそりと呟いた。
彼女は精霊王の使いとして幾度となくキュリオと対面しているが、いつも目にする悠久の王は冷静で…纏う空気はとても穏やかなものだった。
『…それだけ大切なお方を見つけられたという事でしょうね』
水の精霊はキュリオと赤子の笑顔を遠くに見つめながら、彼らの間にある深い愛情を目の当りにした気がした。
『…我が王にもいつかそのような御仁が現れるだろうか…』
『…どうでしょう』
長年エクシスに仕える二人の精霊でさえ、彼の笑った顔は一度も見たことがない。かといって不満を言うわけでもないため精霊王が何を望み…何を感じているのかもわからないのだ。
『…所詮"人"と精霊では互いのぬくもりを感じることが出来ない…』
『…ですが、御仁が王ならば話は変るのでは…』