狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅡ―ⅶ 狂い始めた歯車Ⅶ
「……」
すると…腕の中のアオイは無言のまま小さく身じろぎし、彼のバスローブの襟をクイクイと引っ張った。
「…あぁ、おなかがすいたのかな?ミルクにしようか」
またはっとして我に返るキュリオ。そして気を取り直すように女官に用意させたミルクと水を探した。
さすがは手慣れた女官だけあり、二人が湯殿にいることを念頭においてミルクの温度が高めに調整されていたのだろう。キュリオがボトルに触れるとちょうど"人肌程度"になっていた。
"人肌程度"のボトルと水の入ったグラスをベッドの脇机に運ぶと、彼は慣れた様子で幼子にミルクをあげていく。
最初はボトルを見て戸惑いを見せていたアオイだったが、随分二人とも成長した。ミルクをあげることにキュリオは慣れ、彼の手からミルクを飲む事に慣れたアオイ。
「次のミルクは私が用意しよう」
アオイの頭を左手で支えながら、指先で彼女の髪をなでる。可愛らしい彼女の姿に穏やかな笑みを浮かべるキュリオだが…いつも通り三分の一ほどでアオイの食事は終了してしまう。
だいぶ間隔をあけたと思っても、彼女はいつもそこでミルクを飲むのを止めてしまうのだ。
「…お前は本当に小食だね?」
(成長に影響しないといいのだが…)
「或いは…もう少し体が大きくなればまた変わるのだろうか…」
ミルクが卒業となれば、料理長・ジルに相談してみるのもいいかもしれない。彼ならば、少量でも満ち足りた栄養分を摂取できる美味い品を考えてくれるはずだからだ。