狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅡ―ⅹ 狂い始めた歯車Ⅹ



安心したような笑みを浮かべ、美しい彼はそれから目を閉じたまま全く動かなくなってしまった。そして…規則正しい呼吸に、肩にかかっていた長い髪がサラリと流れる。



「……」



流れ落ちた銀の髪にアオイはそっと手を伸ばした。
そして指先に触れた絹糸のような感触に幼子は目を輝かせている。



「…っ!!きゃぁっ」



その感触がよほど気に入ったのか、アオイはその後何度も彼の髪を撫で続ける。すると無意識なのか…キュリオの顔に優しい笑みが浮かんだ―――


やがて遊び疲れたアオイは日の光の降り注ぐ窓辺へと目を向ける。彼女の視界に小さな影が飛び込んできたかと思うと、それは色鮮やかな小鳥たちのものだった。

そして小鳥とアオイの視線が絡み合うと、気が付いた彼女たちは幼子を窓の外へと誘うように美しい歌を唄う。



「…っ!」



アオイの目には何もかもが新鮮で、痛む体も気にならないほど心は弾み…興味に対する過度な好奇心が彼女の体を突き動かしていた。


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