狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅢ―ⅴ エデン・後悔の念Ⅳ
『かしこまりました。エデン王に伝えて参ります』
足音が遠ざかるとキュリオはアオイの体を枕に寄りかからせ、なるべく彼女から目を離さぬよう気を付けながらクローゼットに手をかけた。丈の長い白い衣を取り出すと、手早く着替えを済ませる。
「すまないアオイ…」
涙に潤んだ瞳を向けるアオイに心を痛めながら、キュリオは彼女を腕に抱き部屋を出ていく。そして…部屋の入口から離れた場所にいる女官に幼子を預け、彼は颯爽と階段をおりていった。
階段を降り、開けた場所にでると先程の家臣が主(あるじ)を案内するためすぐ傍に待機していた。
「お待ちしておりましたキュリオ様。エデン王は中庭におられます。ご案内いたします」
「あぁ」
頷いたキュリオは彼の後ろをついて行く。そしてやがて見えた雷の王の姿。
…彼はとある場所で立ち止まり、悲痛な面持ちで何かを見つめている…
「待たせたね。エデン」
その声に振り返った彼を見て…キュリオの中でひとつの言葉が呼び起された。
"…とある女性がこの花に似たその王に想いを託して贈ったものらしい"
(なぜ今先代の言葉を…)
日の光を浴びたエデンの髪と瞳がまるで太陽を思わせる色だからだろうか…妙な胸騒ぎを必死に拭い去ろうとするキュリオ。
「キュリオ殿、先日は申し訳なかった。大臣からの返事に不備はなかっただろうか…」
「いや、こちらこそ急に悪かったね。迅速に対応していただき感謝しているよ」
二人は握手を交わすと…先程エデンが見ていた大輪の花へと視線をうつす。
「そういえばエデン…君はこの花に見覚えが…?」
探る様に言葉を選びながらキュリオは彼に質問を投げかける。