狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅢ―ⅵ エデン・後悔の念Ⅴ
「……」
だが彼は無言のままその花を見つめている。そんなエデンの瞳は悲しみの色を宿し、しばらくの沈黙の後…やっと口を開いた。
「この花がここにある事に…俺のほうが驚いている…」
「…それはどういう意味だい?」
にわかに視線を鋭くさせたキュリオ。これ以上聞いてはいけないような…嫌な胸騒ぎがどんどん大きくなっていく。
「…いや、俺の知るこの花は…もう遥か昔に枯れてしまったからな」
「…どこでこの花を?…」
そこまで口にしたエデンが驚いたようにキュリオの顔を見つめる。
「俺の国でだが…」
「……」
すると何かを考えるようにキュリオは押し黙ってしまった。
「でもまぁ…この花が育つには悠久の環境が一番って事だな。稲妻の光ではすぐに枯れてしまったよ。本当に可哀想な事をした…」
含みを持つようなエデンの言葉。そして彼は愛しいものに触れるようにそっとその花びらを指先でなでている―――