狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅢ―ⅹ 黒い瞳
「結局…キュリオが言ってた出生不明の赤子の話は片が付いたって事か…」
(じゃあ俺に気が付いたあのガキは…やっぱりキュリオの子供…?)
キュリオとエデンの死角に入り、大きな木の上で二人の話を聞いていたのはヴァンパイアの王・ティーダだった。
気配を消しながら二人の様子を伺っていた彼は、今朝の騒ぎまでは知らない。ただ、気になるあの赤ん坊に会いに来ただけなのだが…運悪く外に出て来ていないようだ。そしてその代わり…先程から城の中で赤子の声が響いている。
(あのガキは城の中だな…)
そして先程からキュリオの恋わずらいの話になり、<紅蓮の王>はつまらなそうに足を投げ出して大きな幹に寄りかかった。
「女の話なんざ俺は興味ねぇな…」
黒い瞳の彼は、ふぅ…とため息をつき頭上を見上げる。
新緑さながらの柔らかい色を保った葉たちが、そよぐ風にその身を揺らし…隙間からは木漏れ日が差し込んでいる。ヴァンパイアが苦手とする日の光さえも<紅蓮の王>の彼ならばどうってことはない。
しかし、彼の紅の瞳は目立ってしまうため…こうして散策している際は黒い瞳に変化させているのだった。