狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅣ <紅蓮の王>とアオイ
その時…
「おおっ!!ひめさま~!!この料理長・ジルの事はジィと呼んでくださって構いませんぞっ!!」
「…?」
キョトンとした瞳を向けて首を傾げているアオイ。
聞きなれない言葉を耳にし、反応に困っている様子だった。
「んまっ!ジル様ったらすっかりおじい様気分ですのね?」
ふふっと笑う上品な女官の声も聞こえる。
そして女官につられるようにアオイの顔にも笑みが浮かぶ。
「ぅっきゃぁあ」
あたたかい雰囲気を肌で感じ、楽しそうな幼い声が心地よく響いた。
「はっ!!あのメレンゲの焼き菓子なら…ひめさまも…」
(うるせー声だな…あの独り言がいちいちでかいのが料理長・ジルってやつか…)
バタバタと足音が遠ざかるのを確認し、ふん…と腕組みをしながら城の中を覗こうとする<紅蓮の王>。
彼らは二階部分にあたる広間にいるらしい。そして、窓の近くにたつ女が何かを抱きしめているのが見える。