狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅣ―ⅰ <紅蓮の王>とアオイ



その抱きしめている"何か"が、笑い声と同時に足をバタバタさせているのが見え…それがおそらく自分が探していた子供だろうことがわかった。



「……」



話を聞くのに夢中になっているアオイだったが、ピタリと動きを止め…あたりをキョロキョロと見回しはじめる。



「…いかがなさいました?姫様…」



そして後ろを振り返ったアオイは…またも<紅蓮の王>の姿を見つけたのだ。



「…っ!」



まさかこの角度から赤子が気付くとは思わず、ティーダは引き寄せられるように思わず身を乗り出した。



「外が気になるのですか?鳥でもいるのかしら…?」



不思議に思った女官が彼女を抱いたまま窓の外を覗き込んだ。



「あれは…鴉(クロウ)?瞳が赤いなんて珍しい…」



もちろんそれはティーダが姿を変えて鳥になったものだ。しかし、彼が鴉になってもアオイは彼から目を逸らさず…黒光りする艶やかなその身と、血に染まったような紅の瞳を目に焼き付けるようにいつまでも見ている。



(…近くに行ってみるか…)



妙な好奇心に駆りたてられ、ティーダは鴉(クロウ)の姿のまま窓の傍の枝へと移動する。



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