狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅣ―ⅱ <紅い瞳の鴉>とアオイ
「人懐っこい鴉ですわね…」
目の前の枝にとまった鴉にアオイを突かれてはなるまいと、女官は傍のソファへと彼女をおろしてから窓に立つ。そして、開いている窓から女官が顔を出すと…
(ちっ…お前に会いに来たわけじゃねぇよ!!)
「ガァアアッ!!」
鴉が彼女を馬鹿にするように大声で威嚇した。
「きゃっ」
「…っ」
さらにバサバサと大きな翼を広げ、女官を威嚇し続ける鴉。
「…っ!」
すると、鴉の声と音に背後で驚いたアオイ。
ビクっと小さな体が震え、恐怖のあまりぐずり始めてしまった。
「…ふぇっ…うぅっ…」
その小さな声は…中庭にいたキュリオの鼓動を激しく鳴らす。
(この声は…アオイ?泣いているのか…?)
(まさか…また…)
嫌な汗がにじみでて、どんどん彼の背を冷やしていく。
「エデン、すまない…すぐ戻る」
「ん?あぁ…」
タッと駆けだしたキュリオの銀髪がキラキラと風を通す。
彼の真剣な眼差しを見て、首を傾げるエデン。
それもそのはず…
アオイの小さなぐずり声はエデンには聞こえず、キュリオにしか聞こえていなかったのだ。
完全に親馬鹿というよりも…キュリオの五感すべてがアオイに向けられているといっても過言ではないのだった―――