狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅣ―ⅴ 小さなぬくもりを抱きしめてⅢ
急いで中庭へ戻ったキュリオ。
すると…エデンはその一角のテラスでティーカップに口を付けていた。
おそらく、気を利かせた侍女たちが茶の席へと彼を誘導してくれたのだろう。
「すまないエデン」
「キュリオ殿、問題ない。気にしないでくれ」
そして小走りに戻ってきたキュリオを気遣うようにエデンが口を開いた。
「…もし忙しいのなら失礼するが」
「いや…ちょっと体の弱い幼子がいるものだからね」
「ん…、言っていた育児中の子供か?」
「そうだね」
なぜか表情を曇らせたキュリオにエデンが問う。
「キュリオ殿でも治せない程なのか?」
「あぁ。原因がわからないんだよ」
「なるほど…」
「だが…悠久は公務も多いのだろう?連れて歩くわけには…」
「……」
キュリオは無言のままだ。きっと彼もそれを心配しているに違いない。
「…提案なんだが、その子の傍に魔導師を置くのはどうだろう。キュリオ殿の力には及ばぬにせよ、家臣たちに預けるよりは安心できるんじゃないか?」
はっとしたキュリオはエデンの顔をみて驚いている。
「それはいい考えかもしれない…」