狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅣ―ⅵ 昼時の厨房へⅠ
"実は私もその子が子供と触れ合う機会をつくってやろうと思っててね。体の事もあるから…少し先延ばしになるかもしれないが…"
"そういう事だったのか…。俺の独り言だが、悠久の使者として来た二人のチビたちだがな…なかなか良い目をしていたと思う"
(アレスとカイの事か…)
エデンとのやりとりを思い出しながら二人の幼い少年の顔を浮かべ、キュリオは楽しそうに笑った。あの後、エデンに昼食を誘ったが…丸一日国に戻っていないという事であのまま悠久を発ったのだ。
時間にしてちょうど昼頃。アオイの食事を用意するため厨房へと顔を出してみる。
「皆ご苦労だね。少し場所を借りるが…いいかな?」
「…っ!!」
「キュリオ様だっ!!」
「おおっ!!」
またいつものような反応が返ってくる。会う度(たび)、初対面のような反応見せる料理人の彼ら。その中からジルの姿を探すが…どうやらここにはいないようだ。
しかし…
「よおぉおしっ!!完璧だっ!!」
と、奥のほうから声がして勢いよく立ちあがったのは料理長・ジルだった。
キュリオはそっと近寄り、彼の背後から手元を覗いてみる。
「ジル…それは何かな?」
「はいっ!キュリオ様!!こちらは…」
「…なにっ!!キュリオ様っっ!?」
とまで答えて、やっと飛び上がるように驚いた。いつも楽しいジルの挙動はキュリオを笑顔にさせてくれる。
「すまない、驚かせてしまったね。それが何か聞いてもいいかな?」
にこやかな表情のキュリオは、ジルの手元のものに興味津々の様子だ。