狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅤ 王の夢
「…アオイ…私に食べさせてくれるのかい?」
「きゃぁっ」
彼女は急かすようにグイグイと菓子を握る手をキュリオの口元に近づけてくる。おそらくアオイの目にはそれが正解だとうつっているに違いなかった。
「…君の手から何かを食す日がこんなに早く来るとは思わなかった…」
小さな感動にクスリと笑いながら、形の良い唇を薄く開き…差し出された白いそれを口に含む。しっとりと柔らかい彼女の指先がキュリオの下唇に触れると、繊細な幼子の手を傷つけてしまわぬよう…キュリオはゆっくり顔を離していく。
「私は幸せ者だな…」
彼女の瞳を見つめながらそう呟くと…伝わったのか、口角を上げて楽しそうに笑うアオイ。そしてその小さな手はもう一度グラスへと向かう。
「アオイ、そのまま自分の口に持って行ってごらん?」
「……」
キュリオの言っている意味がわからないのか、今度は菓子を握ったまま微動だにしない。やがて…
「ぅきゃぁっ」
やはりその小さな手はキュリオの口元へと向けられるのであった―――