狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
Ⅲ―ⅴ 人肌ていど?
「いい頃合いかな」
キュリオは食事もそこそこに適温になったであろうミルクのボトルを手にして立ちあがった。
「キュリオ様…もうよろしいのですか?」
テーブルに並べられた料理の中には手が付けられていないもあり、普段の彼の食事量からしても足りていないことは明らかだった。
「ああ、私はもういい。
おなかをすかせている子が待っているから部屋に戻るよ」
片手をあげ退室しようとするキュリオの後ろ姿を数人の女官が急ぎ足に追いかける。中には世話係として先程キュリオの部屋にいた女官の姿もあった。
「お待ちくださいキュリオ様っ!赤ん坊の世話でしたら私たちが…」
いくらなんでも自分の子でもないのに、一国の王にそんなことをさせるわけにはいかない。
しかし、キュリオの反応は薄く…
「君たちはそろそろ休みなさい」
そう言う彼の瞳は女官たちの姿を映しておらず、ただ一点、己の部屋の扉へと向けられていた。