狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅤ―ⅳ 王の夢Ⅳ
「……」
不思議と、言われている意味は何となくわかったものの…赤子のアオイは言葉にする手段をもたない。
『…まだ小さすぎるな…』
そう呟いた彼は、何をするでもなく…ただ目の前の巨大な木の根に腰をおろし遠くを見つめている。
「……」
そういえば、自分はどこに座っているのか気になり…足元を見つめたアオイ。そしてそこには手触りの良いソファ。それはキュリオの執務室に置いてあるものと同じものだった。
…この景色にこのソファは違和感がある。
そして次に、両脇にクッションが現れ始めた。
「…っ…」
唐突な物体の出現にアオイが驚きを隠せないでいると…
『…昼寝でもしていたのか…』
と翡翠の瞳の青年が視線だけをこちらによこした。
…そしてさらに出現したのは物だけではない。
「…アオイ?」
耳元で囁かれるような鮮明なキュリオの声。キョロキョロと周りを見渡すアオイの意識は次第に覚醒していき…
パチクリと瞳を開けた彼女が目にしたのは、心配そうに己の顔を覗きこんでいるキュリオの姿だった―――