狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅤ―ⅴ 王の夢Ⅴ
「…?」
急に変わった目の前の景色にアオイの思考はうまくついていけてない。キュリオの顔をうつした瞳は戸惑うようにあたりを見回している。
「…夢でも見ていたのかな…」
―――キュリオは仕事が一段落すると、ようやく目の前に座る幼子へと目をむけた。すると、大人しく座っていると思っていた彼女はどうやら眠りに落ちてしまったらしい。
大樹の露が効いているとわかっていても、やはり気が気でないキュリオは彼女の前に片膝をつき…顔を覗きこんだ。
すると…顔色もよく、規則正しい寝息を立てているアオイに安心したのだが…やがて彼女は何かに驚いたような反応を見せた。
…おそらく夢の中で両脇にクッションが現れた時のものだ。
そしてキュリオはそんなアオイの様子にはっとし、思わず彼女を起こしてしまったのである。
目覚めても泣かず、至って元気そうな幼子の表情を目にしたキュリオは安心したように深い息をついた。
「起こして悪かったね、…私は心配し過ぎなのだろうか…」
(それより…人目のない夜が心配だ。私が起きていればよい話だが…)
これから来る闇の時刻。自分が寝ずの番をするにも限界がある。キュリオは彼女が元気を取り戻した事に浮かれていたが…それからも不安は付きまとうのだった―――