狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅤ―ⅶ キュリオの片想いⅡ
アオイはというと、体から消えていく光の粒を追いかけようと小さな手を伸ばし…いつまでたっても見慣れぬ美しい光景に目を輝かせている。
彼女の体に異常がないとわかったキュリオは、ほっと胸をなでおろし…今度は悠久の大地へ向けて癒しの力を放った―――
そしてそれは、城のすぐ傍の森にいた彼の元にも降り注いでいる。その光をじっと見つめる彼の瞳は暗闇でもわかる鮮やかな血の色を宿していた。
「キュリオのやつ…ほんと便利な力だな…」
「っつーか、四六時中ベタベタしてやがんのか?あの二人は」
半ばあきれ顔でティーダは呟いた。そして二人が親子関係であろう事は彼の中ではほぼ確信となっていく。
やがておさまっていく癒しの光を見届けたキュリオは、赤子と共に室内へと戻って行ってしまった。
「…出直すか…」
アオイへ近づくチャンスは少なくとも今日ではないと踏んだ彼は軽く木の幹を蹴ると、闇に溶け込むような漆黒の翼を背に広げ…夜空へと消えて行った―――