狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅥ―ⅳ 砕けた宝珠Ⅱ
「…仙水、エデンにあの事は伝えていないだろうな…」
「…えぇ…、でも良いのですか?」
まるで後ろめたい事があるように、仙水と呼ばれた彼は不安そうに視線を下げた。
そんな彼を余所に九条は胸元で強く拳を握りしめ、ビリビリと迸(ほとばし)る黒い光の中から何かを取出し…切なく目を細める。
彼が握りしめるその一点に…砕かれた宝珠がはめ込まれている。
しかし、ここ数日でその宝珠は本来のかたちを取戻しつつあり、徐々に輝きを放ち始めたのだった。
愛おしそうにそれを指先でなぞる九条。
「…もうすぐだ」
一瞬、優しく変化した彼の表情が…たちまち憎悪に満ちた鋭い眼差しへと変わる。
「…九条…」
そんな彼の様子を仙水は寂しそうに見つめていた―――