狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅥ―ⅵ もうひとりの千年王
エデンは王宮のもっとも奥深い位置にある…歴代の王たちが残した古い記録の連なる巨大な書庫に来ていた。ひんやりとした空気を肌に感じながらエデンはいくつかの明かりに火を灯していく。どれほどの王たちがここを出入りし…過去の記録に目を通しながら、未来に夢を馳せたのだろう…
そして部屋の中心に置かれた台座の上には…金の縁取りが美しい古びた本に寄り添うように、大輪の花を封じ込めた水晶が添えてある。
『小さな国の小さなお姫様のお話』
その本はだいぶ色褪せ…表紙の文字は霞んでしまっていた。
かなり使い込んである様子だったが、持ち主の愛が感じられるほどに大切に保管してあったものだ。そして…
当時の物と思われる大輪の花は、今でも朽ちる事無く美しく水晶の中で生き続けていた…
―――意味深な古びた本と大輪の花―――
金の縁取りが許されたこの本を書いたのは…
当時、雷の王だった偉大な千年王が記したものである―――