狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅥ―ⅹ 王と女神
だが、そんなところがまた女性には堪らないらしい。さらには例え自分に好意の眼差しが向けられなくとも、ただ見つめているだけで…という女たちがいるというのだ。
そして、現王のキュリオには先代と同じ…もしくはそれ以上の人気がある。以前ガーラントが言っていた"女神"たちはこれらに属し、慎ましいどころか…キュリオの迷惑を考えていないから問題なのだ。
女神たちは悠久の創生期、王の力となり…大地を守護した気高い一族だと言われていた。しかし、偉大な王に守られたこの国は…やがて女神たちの力を必要としなくなり…徐々にその力と気品を失っていったとされているのだ。そもそも"女神"というのはただの愛称で、神のような力をもっていたわけでもない。せいぜい人の世でいう"巫女"のようなものである。
しかしその伝承のせいで…王と女神の結びつきは今でも断ち切ることが出来ず、力を失い、ただの人となった彼女たちを完全に跳ね除けることが出来ずにいるのだった。
「外は少し冷えているだろうか…」
キュリオはアオイを抱き、ベッドから下りると長めの上着を肩に羽織り部屋を出た。
廊下に出ると朝焼けの光が満ちあふれ、幻想的な光景が広がっている。夕焼けとはまた違う清々しい金色の光。キュリオはそれが好きで、いつも決まってこの時間に起床しているのだった。