狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅦ 女神
まずはじめに厨房に立ち寄り、あたためたミルクを小さめのボトルに入れ持ち出した。布で包みながら、アオイがそれで暖をとれるよう彼女の体の上でキュリオがボトルを支える。
「アオイ、寒くないかい?」
「んきゃぁっ」
キュリオが差し出したそれがミルクとわかったアオイは嬉しそうに声をあげ、彼の手ごとペタペタと触り始めている。
「まだちょっと熱いから…もう少し待っておくれ」
幸せそうに微笑みながらキュリオは庭の端にある果実の木を目指した。
庭に出た二人の頬を爽やかな風が誘う。そして、ゆるやかになびく髪もそのままに水蜜桃の木の下にたどり着いたキュリオとアオイ。甘い香りが辺りに漂い、それが頭上になる宝石のような果実だと、小さいアオイがそれを理解するまでには少し時間がかかった。
「…そろそろ熟れてきただろうか」
「…?」
キュリオの呟きにアオイが顔を上げると、可愛らしいピンク色の実が甘い香りを放ち、その身を重そうに揺らしていた。すると…幼子は初めて見る果実に好奇心をくすぐられ、口角をあげながら瞳を輝かせている。
「そうだ。朝食に出してもらおうか?とても柔らかい果実だから…アオイも食べられるはずだよ」
キュリオは腕の中のアオイに視線を下げ、ふふっと笑った。