狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅦ―ⅰ 女神Ⅰ
この果実は女性の美しさ・招福・長寿などの意味を持っており、縁起の良いものとして知られている。彼女を大事にしているキュリオとしては、是非ともアオイに食してもらいたいのだった。
―――こうして二人は水蜜桃の木の下で穏やかな時間を過ごしていた。すると…突如、けたたましい声によってそれは破られ…
「な、なりません!!五の女神様っ!!この庭はキュリオ王のものですぞっっ!!」
やや年老いた男の声が静かな庭園に響いた。
「…なにごとだ…」
やや不機嫌さを含んだキュリオの声と視線が後方へと向けられる。
「今日くらいいいじゃない!私の誕生日なんだからっ!」
パタパタと足音を立て、声の持ち主がどんどん近づいてくる。まだ姿は見えぬものの、キュリオには聞き覚えがあった。
「……」
キュリオは無言のまま…足音のする方向へと冷たい視線を投げつける。
やがて…
「…あ…っ!!キュリオ様っっ!!」
遠くに見えた年若い女の姿。
そして…美しい銀髪の王の姿を視界にとらえた少女は、派手なドレスの裾を持ち上げ…満面の笑みでキュリオの胸元に飛び込んできたのだった―――