狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅦ―ⅲ 女神Ⅲ
驚愕する彼をよそにマゼンタと呼ばれた少女はいつまでもキュリオの首にぶら下がり続け、彼のぬくもりに酔いしれている。
「も、申し訳ございませんっ!!キュリオ様…っ!!」
ぶら下がる彼女をキュリオから引きはがそうとした彼だが、マゼンタの腕は緩む事なくキュリオをとらえて離さない。
その時、
「いい加減にしなさい!!マゼンタ!!」
落ち着きのある女性の声が響き、長女のウィスタリアが現れた。彼女は柔らかい藤色の装飾にその身をかため、仕草や話口調がとても穏やかな大人の女性だ。
「…君も来ていたんだね。ウィスタリア」
彼女が現れた事で、口を尖らせながらもキュリオから手を離していくマゼンタ。ようやく解放された彼女の腕にほっと溜息をつくキュリオ。
「…はい。ご無沙汰しておりますキュリオ様…こんなに朝早く…本当に申し訳ありませんでした」
すまなそうに頭を下げるウィスタリアだが、それでもキュリオに会えた事が嬉しいようで…彼女は俯きながら赤くなった頬を隠すので精一杯だった―――