狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅦ―ⅵ 女神Ⅵ
キュリオは腕の中の何かに微笑んでおり、まるでこちらの言葉は耳に入っていない。そして…少なからずショックを受けた彼女は…
「キュリオ様…それは一体何ですか…?」
「ちょっと!私の話聞いてる!?」
無視されたマゼンタは激昂し、ウィスタリアに詰め寄ったが…ショックを受けたような彼女の表情を目にし、思わず大好きな王を振り返った。
「…話は終わったのかい?」
先程とは違う、冷ややかな目をこちらに向けたキュリオは…腕の中の塊を後方に待機する女官へと手渡している。
「…彼女を頼む」
「かしこまりました…」
すると、大事そうに何かを抱えた女官と数人の侍女はそのまま城へと戻り…キュリオはその後ろ姿を目で追っている。
「…なに…?いまの…」
キュリオの名残惜しそうなその視線を初めて見たマゼンタは、少なからず胸騒ぎを覚え…隣の長女を見やる。
「……」
(ウィスタリア…悲しそう…)