狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅧ―ⅱ ウィスタリアの恋Ⅱ
それまで考え事をしていたウィスタリアは、年の離れた妹の言葉が理解できず目を丸くさせている。
「んもぅっ!!しっかりしてよ!!さっきのキュリオ様の御召し物!見た?って聞いたのよ!!」
怒りに顔を近づけてきたマゼンタの気迫に後ずさりしながらも、ウィスタリアは中庭にいた愛しい王の姿を必死に思い返していた。
「うん…見ていたよ。羽織っていた純白の上着に袖は通していなくて…大事そうに何かを抱えていたわ…」
「それもあるけど中身よ!な・か・みっ!!」
「キュリオ様、バスローブを着ていたんだからっ!!それに…すっごくいい香りだったわ!!」
頬を赤らめ、彼の胸元に飛び込んでしまった自分に恥じらいながら…マゼンタはきゃぁきゃぁと両腕で己の体を抱きしめている。
「いいな…そういうところ。マゼンタがすごく羨ましい…」
すると…穏やかに微笑むウィスタリアを見上げ、マゼンタは子供らしくむくれて見せた。
「…なによそれ…嫌味?」