狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅧ―ⅳ マゼンタの努力Ⅰ
「…ウィスタリア様、マゼンタ様。そろそろキュリオ様がお見えになります。ご準備はよろしいですか?」
「…ええ、大丈夫です。」
特に笑みを浮かべるでもなく、形式的な振る舞いを見せた女官。この表情や口調は堅苦しい職業のせいかと…この時、二人の女神は疑いもしなかった―――
程なくして広間とテラスを繋ぐガラスの扉が開かれると…凛とした服装を纏ったキュリオが現れた。
左右に立つ女官や侍女らが恭(うやうや)しく一礼すると、慌ててウィスタリアとマゼンタも頭を下げた。しかし、右手でそれを遮った王は立ち尽くす女神たちを席へと誘導する。
「煩(わずら)わしい事はいいんだ…早く食事をすすめてくれるとありがたい」
「…は、はい…」
早くも尻込みしてしまったウィスタリア。そしてキュリオは二人と視線を合わせることなく、侍女へ料理を運ぶよう促す。
すると気落ちしたウィスタリアを軽く肘でつつくマゼンタ。
『こんな事でしょげてどうすんの!!これじゃ他の女たちと変わらないじゃない!!』
『…でも…』