狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅧ―ⅴ マゼンタの努力Ⅱ
小声で姉に喝を入れた少女だが、ウィスタリアはキュリオの冷たい態度に動揺が隠せない。
「すみません~!キュリオ様!私食べるの…遅くって!」
わざとらしくアピールするマゼンタは漂い始めた美味しそうな料理の香りにゴクリと喉を鳴らしながら…気合で己の食欲を抑え込もうと必死だった。
「……」
そんなマゼンタをじっと見つめて何か言いたげなキュリオ。
「…へへへっ」
やはり無理があったか…と内心後悔しながらも、マゼンタは笑ってごまかすつもりだ。
「…好きにしなさい」
あからさまなため息をつき、キュリオはつまらなそうにそっぽを向いてしまった。
すると…
「…失礼いたします。キュリオ様…」
パタパタと駆けてきたひとりの女官がキュリオの耳元で何かを囁いた。眉間に皺を寄せている彼女は胸元で手を握りしめながら不安そうに瞳を揺らしている。
「…そうか…もう少し待ってくれ」
ゆっくり目を閉じたキュリオは苦しそうにそう呟くと、頷いた女官は足早に去って行った―――