狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅧ―ⅵ 初恋Ⅰ
やがて大量に運ばれてきた極上の料理にマゼンタとウィスタリアは瞳を輝かせたが、キュリオは興味なさそうに椅子の背もたれに身を預け…穏やかな風の吹く悠久の大地を見渡している。
そんな彼の横顔はとても美しく…太陽の光を浴びた長い銀髪は淡い輝きを纏い、流れるようにその身を揺らしていた。
(キュリオ様…)
そんな彼を見つめながらウィスタリアはキュリオを初めて目にした日を思い返していた―――
彼女は幼少の頃、父や母に連れられ…王立の施設の記念式典に参加したことがある。そして…その式典の意味がわからず、とても退屈していた幼い彼女が目にしたのは人の中心にたたずむみ一際輝く美しい彼の姿だった。
『…父様、あの殿方はどなたですか?』
小さな手で上着の裾を引いた可愛い娘の問いかけに、父親は彼女を抱き上げると満面の笑みで答えた。
『ウィスタリア、お前は初めてだったかな?あのお方はキュリオ様さ!この悠久の王様でね…すでに五百年以上この地をお治めになっている素晴らしい王様なんだよ!』