狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅧ―ⅶ 初恋Ⅱ
そう話す父親の瞳は輝いており、見渡せば…老若男女問わず、万人の民たちが恍惚の眼差しを彼へと向けていた。
(悠久のおうさま…キュリオさま…)
幼い彼女の一目惚れだった―――
今では若い姿を保ったままのキュリオよりも幾分、年を重ねたように見える彼女の容姿。それでもウィスタリアは知性と品を兼ね備えた女神随一の美人と評判だけあって、その美しさは若かりし頃よりも遥かに磨きがかかっている。
そして…まもなく三十を迎えようとしていたウィスタリア。
彼女がこの歳になるまで伴侶を持たなかった理由はただひとつ。
―――キュリオを愛し、愛されたいという願いを捨てられずにいたからだった―――