狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】
ⅩⅩⅨ―ⅱ 異物Ⅱ
ふぅとため息をついたキュリオはゆったりした動作で背もたれに身を預け、椅子の肘掛に両腕を乗せた。そして長い足の上で両手を組み…視線は女官の彼女へと向けられている。
「……」
ウィスタリアはショックのあまり言葉がでない。そして昂ぶった感情は急激に冷えて…面白い事に悲しささえもまったく感じない。
「…で、話というのは?」
もちろんキュリオのその言葉はウィスタリアに向けられたものではない。入ってきた女官に向けれたものだった。
「はい…実は…」
「…姫様がまったく食事を口にしてくださらなくて…」
(…姫?…姫って誰のこと…?)
放心状態で二人の会話を聞いていたウィスタリアだが、その言葉だけが異様なまでに頭に響き…まるで頭痛を誘発する不快な異物のように彼女の精神を崩壊させていく…。
―――キュリオ様の顔を見るのが怖い…
ドキドキと嫌な心の臓の音が聞こえる。そして額には冷や汗が流れ…まるで何かに怯えるような反応を見せるウィスタリアの体。
そして…彼女の嫌な予感は的中してしまう…。